大判例

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東京高等裁判所 昭和63年(ネ)1531号 判決

一 当裁判所は、控訴人らの請求は失当であつて棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決理由説示のとおりであるから、ここにこれを引用する。

控訴人らは、当審において、<ア>の要件は、要するに所定電圧未満の音楽信号が入力しても動作しない回路であることを意味しているとし、被控訴人製品の構成にあつても、回路41で音楽信号を一定レベル以上に増幅し、所定電圧値以上の音楽信号が入力したときのみ積分回路40、42´、したがつて比較回路50は動作し、右以下の電圧の場合は動作しないから<ア>の要件を充足する旨主張する。

ところで、本件考案の構成要件(三)が<ア>の要件及び<イ>の要件からなることは前叙(原判決一六丁裏一〇行ないし一七丁表四行)のとおりであり、被控訴人製品の構成にあつては、回路41が音楽信号を一定比率で増幅するものであること及び動作可能域の音楽信号が入力したときのみ積分回路40、42´は動作し、右以下の入力信号の場合は動作しないことは被控訴人らの認めるところである。

しかして、前掲甲第一号証によれば、本件考案の構成要件(三)に相応する回路についての本件明細書の考案の詳細な説明中の記載は、前叙のとおり(原判決一七丁裏二行ないし一八丁表一行)、本件公報二欄二七行ないし三〇行及び三欄三〇行ないし三三行であること並びに同回路についての図面は前掲甲第一号証の図面の第3図の6及び第5図(本件公報の図面第3図の6及び第5図)であることが認められ、右甲第一号証によつて認められる本件明細書の考案の詳細な説明中の、「増巾器4は、通常の低周波増巾回路から構成されるもので、テープデツキから出力される音楽信号が大きい場合省略してもよい。」(本件公報二欄二四行ないし二六行)との記載が本件考案の構成要件(三)の説明でないことは控訴人らが明らかに争わないところであるのみならず、本件明細書中の増巾器4についての右記載及びその前後の記載並びに右甲第一号証の図面の第3図(本件公報の図面第3図)によれば、右「増巾器4」は、テープデツキから出力される音楽信号を、それに続く波形整形回路6(同様にイヤホン1又はスピーカ5)の動作可能域まで増幅する働きをするものであることが認められる。

これに対し、被控訴人製品の構造を表すものであることが当事者間に争いのない原判決添付別紙物件目録(前記控訴人らが当審において訂正を主張する部分を除く。)によれば、控訴人らが、被控訴人製品の構造(三)の構成の一部であると主張する回路41は、テープデツキ23からの音楽信号を、回路41に続く積分回路40、42´の動作可能域まで単に増幅する回路にすぎないと認められる。

してみれば、被控訴人製品の回路41は、テープデツキから出力される音楽信号を、積分回路40、42´(本件考案においては波形整形回路6)の動作可能域まで、単に増幅するにすぎない点において、本件考案の増巾器4と同じ働きをする回路であるということができる。そうすると、叙上説示したところを総合すれば、被控訴人製品の回路41は、構成上、本件考案の増巾器4に対応されるべきものであつて、本件考案の構成要件(三)に対置してその構成の異同を検討すべき回路には該当しないことが明らかであるから、回路41が被控訴人製品の構造(三)の構成の一部であるとし、即ち、被控訴人製品の構造(三)を当審における控訴人ら主張のように訂正し、それを前提として被控訴人製品の製造(三)が<ア>の要件を充足する旨の控訴人らの主張は、前提において誤りであり、採用できない。

なお、当審における控訴人らの主張(二)(1)のその余の主張は、右引用の原判決理由中の認定、判断を左右するものではない。

二 よつて、控訴人らの請求を棄却した原判決は、当審における控訴人らの主張(二)(2)について検討するまでもなく相当であつて、本件控訴は理由がないからいずれも棄却することとする。

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